2017年12月06日ハノイ国家大学外国語大学日本語学科の学生によるベトナム人従業員と日本人マネージャーの異文化コミュニケーションに関する発表会が行われました。実際に学生たちが、日系企業を訪れてベトナム人従業員や、日本人マネージャーにインタビューした結果を基にした発表だったのですが、想像を遥かに超える素晴らしい発表会でした。
筆者は、定期的にベトナム人マネジメントに関するセミナーなどにも参加しているのですが、セミナーの場合は「日本人から見たベトナム人とは?」という意見がほとんどで、実際のベトナム人の意見ではなかったので、今回の発表会は、とても価値のある内容でした。
この発表内容を学生や、参加した企業だけの間で留めておくのは勿体ないと思い、今回の発表会を企画したハノイ国家大学の内野先生に記事にして良いかお尋ねしたところ、快く了承して頂けたので、今回この記事にまとめる事にしました。尚、今回の記事は日本語学科の4年生のプレゼン発表(合計9チーム)を聞いて、筆者が印象に残った部分をノートに書き留めた情報を基に作成しました。そのため、実際の発表内容の形式とは異なる部分がある事を予めご了承くださいませ。
日系企業について
ベトナム人が、日系企業に就職する理由は?
- 日本語を勉強しているので、必然的に日系企業を選んだ。
- 日本語を勉強し始めた事で、エンジニアになるチャンスを得られたから。
- 日本で働くチャンスがあったから。(海外に出てみたい。)
- 日本語能力を高め、日本の文化や日本人の考え方を勉強したかった。
日系企業で働いてみて良かった点
- どんな仕事でも教えてくれるので、色々な経験が積める。
- 会社の福祉制度が良い。
- トレーニングコースがある。
- 仕事の効率が良く、いつでも計画に基づいて働ける。
- 報連相!最初は少し迷惑だと思っていたが、今は役に立つと思う。
日系企業で働いてみて大変な点
- 会社での異言語(日本人が英語を使えない。お互い第二言語同士なので、分かりあうのが難しいなど。)
- 日系企業での報連相、5Sなど
- 日本人との異文化
日本について
ベトナム人スタッフから見た日本人の特徴
- 自分の利益よりも共同の利益が第一。
- あまり短期的な利益を考えず、長期的な効果を考える。
- パーティーの時は、みんなで乾杯した後にしか食べ始めない。
- 初めての相手には名刺交換をして、お辞儀をする。(ベトナム人は握手するが、日本人はしない。)
- 会議が終わって自分の席に戻るときは、会議室の椅子をきちんと戻す。
- 日本人は普段あまり喋らない。
- 話をしている時に相手の目を直接見ることがあまりない。
ベトナムにはない日本の感覚
✘単身赴任。
(なぜ家族と離れてまで仕事をするのか?仕事辞めたら良いのに。)
✘仕事が1番!家族は2番
(過労死や、子供の引きこもり、熟年離婚。なんで仕事が1番なの?)
ベトナムについて
日本人と比較した際のベトナム人の特徴
- 日本人が会社のために働くのに対して、ベトナム人は自分と自分の家族の利益のためにしか働かない。
- 長期的な発展を重視せず、目の前の利益が得られればそれまでだ。
- ほとんどのベトナムの中小企業は、管理体制が整っていない。(各作業に厳しい要求がない。)
- 国が閉鎖していた期間があるため「お客様」という感覚がない。
- ベトナム人は、活気があるので会社が明るくなる。
- ベトナム人は、仕事へのやる気はたっぷりあるが、働くスピードは遅くて、急がないといけない!という考えが根底にない。
- ベトナム人は、期限ぎりぎりになってから一生懸命やる。
- 責任を持つことが難しい。
- 時間を厳守することが難しい。(時間は、あくまでも目安)
- 仕事中でも集中しない。おしゃべりをしたり何かを食べたりする。
- 事務所の片づけが出来ない。文房具などの整理ができない。
ベトナム人スタッフについて
日本人ボスから見たベトナム人スタッフ
- 報連相が出来ない。
- 作業内容を説明し、協力して解決策を見つけることが難しい。(単独行動が多い。)
- 知識のシェア不足。
- のんびり仕事をする。
- 何かを始める前に確認する習慣がない。
- 簡単な仕事は、とばして良いと勝手に判断する。
ベトナム人スタッフに直してほしいところ。
- 時間厳守、仕事への責任、向上心を持ってほしい。
- 言われたことをするだけではなくて、もっと意見を出してほしい。
- 自分で勝手に仕事をせずに報告してほしい。
- 社内の報連相を徹底的にやってほしい。
- 仕事をやるときはやる!遊ぶときは遊ぶ!というメリハリを付けてほしい。
日本人のボスについて
ベトナム人スタッフから見た日本人ボス
- とても優しい。(1人の時に注意するなどの配慮もしてくれる。ベトナム人のボスや、韓国人のボスは直接叱る。)
- いつも悪い事が起きた時のリスクを考えている。(ベトナム人のボスは、良い事しか考えない。)
- 女性社員への配慮がある。(妊婦さんや、子供がいる人へのケア)
- 日本人のボスは、社員なのに会社の事を考えている。(社長じゃないのに。)
- 部下を守る。(日本人のボスは何かあったらお客様に謝りに行ってくれる。ベトナム人のボスは、自分で謝ってこい!という。)
- いつも従業員の意見を聞いてくれる。
- 社員たちにもっと努力するように促してくれる。
- いつも気楽な雰囲気を作ってくれる。
- 社員の能力や、努力によって評価する。
- 親切で、ベトナム人とレクリエーション活動に参加してくれる。
- 効率的に働く。
- 先見性がある。
日本人のボスに直してほしいところ。
- ベトナムの文化についてもっと調べてほしい。
- ベトナム人は、家族との関係を重視するので、親戚の結婚式などで会社を休むことを理解してほしい。
- 時々食事会を開催してほしい!懇親会はとっても大切!
- みんなとの連帯感を強化するため、一緒にご飯を食べてほしい!
- みんなのミスを共有してほしい(教えてほしい。)
- 直接本音を言ってほしい!(気持ちがわかりづらい。)
- 遠回しの表現を使うから、時々言われた事が理解しにくい。
ベトナムの人は、怒られるの嫌いだし、間接的にやんわり言われた方が良いのかなーと思っていたのですが、そうでは無いんですね。
- もっと生活の中で、人間関係を築いてほしい。
- 「郷に入っては郷に従え」精神を持ってほしい。
- 外から内に。単純な仕事だけの関係ではなく、仲間の関係になってほしい。
- 厳しい規則を少し緩和してほしい。
- 規則だから!ではなく、広く考えてほしい。(日本のようになんでもスムーズにはいきません。ベトナムでは色々な事が発生するんですよ。)
「直接的に言ってほしい!」「一緒にご飯を食べてほしい!」「仲間になってほしい!」という意見が出ていました。
日本人ボスへの提案
※インタビューをした学生からの提案です。
- もっとよくコミュニケーションする。
- トレーニング講座を取り入れてみる。
- 団体活動(社員旅行など)をする。
会社訪問を実施してみて
学生の感想
- 職場環境を実際に見学できた。
- 職場におけるベトナム人と日本人の食い違いが分かるようになった。
- 仕事の効率を上げるため、職場における日本人のやり方やルールを勉強しておくと就職した後によさそう。
いかがでしたでしょうか? 「確かにね! 」と思うところもあれば、「そんなところ気にしているの!? 」なんてところもあったのでは無いでしょうか?
やはり、ベトナム人の意見は日本人がいくら考えるよりも直接聞いた方が良いですね。
今年のインタビューや発表会は既に終了してしまっているのですが、来年も同様の発表会が行われる予定ですので、今回の記事を読んで「是非学生にインタビューに来てほしい! 」「発表会に参加してみたい! 」と思われた方は、「お問い合わせフォーム」よりご連絡下さいませ。