ハノイの日系旅行会社で現地採用者として働く五十嵐さんインタビュー

以前の記事で、ハノイで働く若き駐在員伊藤さんにインタビューをしたので、今回は私と同じ現地採用者として働く、五十嵐さんに色々とお話を聞いてみました。

Halca
よろしくお願いします。
五十嵐さん
はい、よろしくお願いします。
Halca
まず簡単に自己紹介からお願いします。
五十嵐さん
新潟県新潟市出身の五十嵐麟太郎と申します。92年生まれの26歳です。
現在TNK&APTトラベルという旅行会社に勤めております。

埼玉の大学を卒業して1年間、山形の離島に行ってまして、観光業を手伝ったりして楽しいなって思っていた時に、父がよく出張でベトナムに来ていた関係で今の会社を紹介してもらいました。

Halca
そうなんですね!
五十嵐さん
あっ、ただ父からの紹介は「こんな会社あるよー」ぐらいの感じです。

そのあと自分でいろいろ調べて面白そうだなと思ったので、向上心だけ買っていただいて、完全にノースキルでベトナムに来たっていう感じですね。
それでハノイに配属されて、ずっとハノイで働いています。

Halca
なるほど。それでは、就職したTNK&APTトラベルさんについて教えてください。
五十嵐さん
TNK&APTトラベルは日本人の代表がホーチミンで始めた会社で、今年で創立15年になります。
近頃乱立しているベトナムにある旅行会社の中ではわりと老舗の方です。

東南アジアを中心に展開していて、ベトナムではハノイとホイアンとホーチミンに支店があります。
カンボジアにもう1つ支店があって、あと支店はないんですけど、ラオスとタイにも提携先があって、そこのツアーも取り扱っています。要するに旅行代理店ですね。
日本語ガイドツアーをメインに取り扱っているということもあるのですが、規模に対して日本人スタッフが多いのが特徴です。
ハノイで4人、ホーチミンで4人、ホイアンが2人、カンボジアに1人、日本人スタッフが常勤しています。

Halca
たくさんいらっしゃるんですね!
五十嵐さん
はい、現地の日本人スタッフが多いので、旅行会社の垣根を超えてなんでもやっています。
あんまり他社がやってないところですとバスの手配や、列車の手配なども行っています。

あとはショーのチケットですとか、レンタカー手配、通訳手配、Wi-Fi貸出、携帯貸出ですとか、旅行に関わることを手広くやっていますね。あとはいわゆる現地視察で日本から来る人たちのアテンドですとか、それこそ15年日本人スタッフが常駐でやっている会社ですので、日本の企業と現地企業とのコーディネートなんかもしていますね。

Halca
色々なことを行っているんですね。
そのなかで、具体的に五十嵐さんは、どのようなお仕事をされているんですか?
五十嵐さん
主にツアーオペレーターと呼ばれる仕事をしています。
お客様から「こんなツアーいきたいんだけど」というような相談を受けたりですとか、自社のホームページで売っているツアーの注文を受けたときにそれを手配して、催行するっていう仕事ですね。

ただ、今は店長という立場も任せていただいてるので、諸々の会計とかマネジメントとかマーケティングとか、ハノイ支店に関することは、なんでも携わっている感じです。

わりと裁量権が与えられているので、売りたいツアーを決めたりですとか、キャンペーンを打ったりですとか、「ここに営業にいきます!」みたいなことは自由にやらせていただいてるので、そういった策定が自由にできるというのは、うちの会社ならではの魅力かなぁというふうに思います。

Halca
さきほども少しお伺いしましたが、旅行業を選んだきっかけはなんですか?
五十嵐さん
最初はですね、旅行業というか、海外で働きたいぐらいの気持ちだったんですね。
それこそ1年間離島に住んでいた時は、とにかくローカルな世界だったので、ギャップを感じたくて。

グローバルな世界、海外で働きたいという気持ちと、いろんな人たちと接したいと思った時に、旅行業が合うと思って選んだ感じですね。
もともと旅行業をやろうと考えていたわけではないのですが、いまやってみてすごく楽しい仕事だなって思います。

Halca
そうなんですね。
五十嵐さん
旅行業って、一番夢のある仕事だと思うんです。
なんでかっていうと旅行っていうのはみなさんにとって「夢」っていうか楽しさっていうか、すごくハッピーな事なんですよね。

それを自分が叶えたり作ったりできるっていうのはすごく幸せな事ですね。
実際に働くまでは、旅行業を選んだ理由はなんとなく、でしたけど、今はとにかく旅行業って、いい仕事だなぁって思います。

Halca
いいですねぇ。
五十嵐さん
とくにアジアは良い意味で不便さがあるので、その不便さを解消してみたりだとか、そういったところでも楽しみがありますね。
Halca
そうですね。
私もそんなハノイが好きです。
五十嵐さんから見て、旅行先としてのハノイの魅力はなんだと思いますか?
五十嵐さん
こんなに”アジア感”がある街は他にはないと思います。

東南アジアに旅行で来る人って何かを変えたいですとか、日本にはない雑踏を楽しみたいとか、エネルギッシュさ、パワフルさ、人の優しさみたいなものを味わいたいという気持ちがあると思うんですね。あとは物価の違いを楽しみたいとか。そうなった時に、ハノイは全部集約されているんです。

ベトナムでいうと、一番人気はエネルギッシュなホーチミンですけど、ハノイにはエネルギッシュな部分と、それと同じぐらいローカル感と優しさがあるんですね。
とくに私のオフィスがあるのが、ハノイの旧市街なんですけど、そこにはハノイの1番の魅力である雑踏のごちゃごちゃ感と人の暖かさとエネルギッシュ感があります。
それが他の国にはない魅力だと思います。ただの東南アジアではないところですね。

Halca
確かにそうですね!
五十嵐さんがオススメするハノイの観光スポットは、どこですか?
五十嵐さん
ハノイ近郊でも大丈夫ですか?
Halca
はい、大丈夫です。
五十嵐さん
かなり主観になるんですけど、私すごく夕日が好きで、夕日を見たり夕暮れを歩いたりするのが好きなんです。

ハノイの近くで一番綺麗な夕日が観られる、まず1つはハロン湾の宿泊ですね。

日帰りだと夕日が見られないので、ボートに泊まるツアー、プランがおすすめですね。やっぱり絶景だと思います、湾に浮かぶ夕日っていうのは。

ハロン湾の夕日

五十嵐さん
もう1つはサパですね。いまバスができてかなり身近になったので、結構都会って言われてはいるんですけど、実際行ってみると全然そんなことはなくて、近辺の村々にいくと本当にウルルン滞在記みたいな感じなんですね。

サパは、棚田が有名なんですけど、その棚田に沈んでいく夕日を見た時に、これはもういい景色だなぁと。世界遺産でもいいんじゃないかと。
残すべき景色だなって思いました。なのでハロン湾とサパは、ハノイに来たからには見ていただきたいって思う2つですね。

Halca
ハノイの夕日って、湿気がある分モワーっとしていて、日本の夕日とは違うっていうか…。
五十嵐さん
そうなんですよ。
ハノイの夕日も結構好きなんです。排気ガスで霞んでいく夕日も好きです。
カラッと晴れた夕日を見ると、個人的にちょっとネガティブになるんですよね。焦っちゃうじゃないですけど、落ち着かないっていったらいいんですかね。
地平線の彼方に沈む夕日を見ると、なんか切なくなっちゃうんですよね。

ですけど、ハノイの街の雑踏に消えていくボヤーっとした夕日だったりとか、サパの雲海の中に消えていくモヤーっとした夕日だったりですとか、ハロン湾も雲が厚いところですので、味があると言ったらいいんですかね。
優しい光で落ちていく夕日が好きです。

ハロン湾の夕焼け

Halca
あー、わかります!
五十嵐さん
モヤモヤの夕日が。なんですかね、ノスタルジックじゃないですけども、好きですね。
どこに行っても夕日は絶対に見るようにしてます。
1人で見るのがおすすめですね(笑)かなり主観が入っちゃったんですけど、そんな感じですね。

Halca
1人で見るのがおすすめなんですね(笑)
話は変わりますが、ベトナムに来たきっかけを教えてください。
五十嵐さん
もともと海外で働きたいとざっくり思っていて、ただ…”働きたい!”というよりかは、”行きたいなぁー”っていう感じだったんですね。

そのために一度は、日本で就職をしようかとも考えたんですけど、「3年くらい働いて、お金貯めて世界一周しようかなー」ぐらいの感覚だったので、それが見透かされてしまったのか希望していた職種には決まらなくて。
大学を卒業する時点で、自分の中で将来に対するビジョンが全く持てなかったんですね。
エスカレーター式に就活をしてやっていくっていうことにやりきれなかったんです。わがままなのかなぁとも思います。

Halca
いやいや、わがままとかでは無いですよ!
昔と違っていろいろな情報があって、選択肢があり過ぎる分悩みますよね。
五十嵐さん
はい。
いろいろなことが、割り切れなくて。それで、離島で1年間下界との関係を断つじゃないですけど、今までやってきたものの中で考えたいなと思って、悶々と自問自答していました。
そんな中でも、”海外に行きたい!”っていう気持ちはドンドン強くなっていったんですね。

ただ海外に行くにしてもスキルが全くなかったですし、英語もほんとに話せなくて、学生時代にインターンをしてなにかを達成したっていう自信もなかったんです。

そのときに、アジアっていい意味でスキルがない日本人が活躍できるところだと思ったんですね。
日本人というだけで重宝されますし、日本人の可能性を汲んでくれるところだと思います。
私の父が出張でベトナムによく来ていたこともあって、「ベトナムは成長とチャンスが一番あるんじゃないの?」みたいなことを話してくれた時に、「それはそうだ」と思ったんです。
私の父親は、仕事で海外のいろんなところに行っていたので、その中でもベトナムの話を聞いて「じゃあ」って感じになったんですね。

Halca
お父様がきっかけなんですね!
五十嵐さん
はい、あとは「のんびりしたい」とか「海外で恰好よく働きたい」とか、「英語を使って恰好よく働きたい」というより
もっと泥臭く苦労したいぐらいの気持ちがあって、成長するチャンスがあるところだと思ったので、ベトナムを選びました。
Halca
実際にベトナムで働いてみてどうですか?
五十嵐さん
不便さみたいなものは最初すごく感じましたね。

具体的には、スタッフとのコミュニケーションとかですね。旅行会社っていうのは、自分は”確認すること”が仕事だと思っているんですね。
とにかく確認して確実に手配することが旅行会社の1番の仕事だと思っていて、でもその確認とか確実な手配とかってベトナム人ちょっと苦手なんですよ(笑)

とくに確実性って意味では、伝えきれていなかったりですとか、伝えたのに忘れてしまっていたりですとかっていうところでの苦労っていうのはたくさんありました。

Halca
わかります(苦笑)
五十嵐さん
あとは、自分自身の苦労もすごくありました。

あまり自信がない状態でベトナムに来たので、特に言葉の面ですね。英語もほとんど話せないですし、ベトナム語もほとんど話せないっていう状態で、自信がない中で悶々とやっていた時期もありました。そう行った時期は長かったですね、ベトナムに来てから、悶々と悩む人は、結構いると思うんですけど、他の人よりも長かったと思います。

「もっとこれがしたいのに!」とか、「もっと楽しみたい!」とか、思っていたんですが、でも何もやりきれていない自分にモヤモヤとしている時期もありました。
けど、いまはそこでひたむきにやっていたのが評価されてきて、店長っていう立場を与えていただいて、やりたいことで溢れている感じですね。

Halca
頑張って乗り越えたんですね!
五十嵐さん
はい。うちの会社ってまだ若い会社で、すごくスタッフ一人一人に裁量権があるんですね。
ベトナムは、日本と比べて良くも悪くもマナーの面や、制度がゆるいところがあって、日本よりもずっと許されることが多いと思うので、いまは色々なことにとにかく挑戦したいですね。

具体的には以前1つプロジェクトを任されたことがあって、それが「在住者様に向けて遠足を毎週やろう!」っていうような。
在住者に向けて毎週末、遠足みたいなものを企画して、新しい週末の過ごし方を提案してみよう! というのでやってみたんですけど、そのときは正直自信がなく、忙しさを理由に全然できなかったし、飛び込みでいろんなところに行かせてはいただいたんですけど、結果として実らなかったんですね。

Halca
そうなんですか…。
何が原因だったんですか?
五十嵐さん
全然人数が集まらなかったという意味で、遠足はちょっと難しいということで、ダメだったんですね。
でもインターネットで「ハノイ 遠足」って調べるとうちの会社がトップにくるんです! それだけやっぱり需要があると思うんです。

そのニーズに応えて、ハノイ在住の方にも、ハノイに旅行に来ている感覚を味わってもらって、楽しんでもらえるツアーを企画したいです!
普段お世話になっている人たちに喜んでもらえたら嬉しいですし、自分自身も楽しみたいですし、今度は楽しく仕事をしたいですね。

Halca
オォー!
私も参加したいです。
五十嵐さん
是非!
あとは、店長になったので、会社のスタッフにも楽しんでもらいたいです。

うちの会社のベトナム人スタッフってみんな勤続年数が長いんですね。
皆10年ぐらい働いてて、日系企業で同じスタッフが10年ぐらい働いてるのってすごい珍しいことなんです。

入社当初からめちゃくちゃ助けてもらっているんですけど、あまり還元できていないので、今まで以上に充実して働いてもらいたいです。

自分自身も充実したいですし、旅行で来る方たちにも充実してもらいたいですし、そして、在住者の方たちにも充実してもらいたい!っていう気持ちでいまは働いています。

Halca
五十嵐さんのやる気が伝わってきます。
ちなみに、いまハノイ生活は、何年目ぐらいなんですか?
五十嵐さん
今2年と6ヶ月ですね。
ただ、在住者の方たちとの繋がりは、あんまりないんですよ。
どうしても、土日も仕事ですし、仕事も遅いですし…、まぁそれは言い訳でしかないですけど。

なので、これからはもっともっとハノイに携わっている人、ハノイに来る人と関わって、ハノイに住んでいる人の生活っていうのを旅行会社という立場から、楽しくさせていただきたい! っていう感じですね。

Halca
良いですね!
五十嵐さんは、今後どのようなビジョンをお持ちですか?
五十嵐さん
正直にいうと、ほんとに目標とかゼロの状態でベトナムに来て、まだまだがむしゃらにやっている段階なので、明確に何かこう今後のビジョン! っていうのが定まっているわけではなんです。

ただ、短期的な目標ですと言葉、ベトナム語は覚えたいですね。ベトナム語っていうのは将来絶対に役立つスキルだと思うので、ベトナム語を覚えたいって言うのはありますね。

仕事の面ですと……旅行会社っていうのは、いま転換期にあると思うんですね。
それこそトリップアドバイザーですとか、ホテルでいうと新しくAirbnbができたりですとか、航空券はエクスペリアでとか、インターネットで簡単に情報が手に入って、簡単に手配できる時代になってしまったので。

そのなかで、現地に住んでいる日本人が提案できることって物凄くあるんですね。インターネットだけでは手に入れられない情報があるんですよ。
うちの会社は、ほとんどの日本人スタッフが旧市街に住んでいて、地元の人たちと一緒に働いているので、それを提供できるんです。
そのような形態をもっともっと他の国でも広めていきたいと思ってます。なので、いま考えているのは、他の国への出店です。もし、出店出来たら、私がそこの第一の日本人スタッフとして働きたいですね。

あとは大きな夢でいうと、海外に出てみて「同じぐらい日本が好きだなぁ」と気付けたので、旅行を通じて世界をもっと身近にしたいですし、日本と世界の懸け橋になりたいです。

懸け橋になれる1番のとっかかりってやっぱり旅行だと思うんですよね。海外旅行って一番最初じゃないですか! なので懸け橋になるっていう部分での旅行、懸け橋になれるような旅行を提案していきたいなぁと思いますね。
旅を通じて世界をもっと楽しく! もっと身近に! ローカルに! グローバルな世界の中でのローカルを、日本の人に感じてもらいたいですね。


Halca
素敵ですね。
では、最後に一言お願いします。
五十嵐さん
私自身、旅行を提案するにしても、住むにしても、ハノイで一番好きなところは旧市街なんです。

それは、飲み歩くのもそうですし、練り歩くでもそうですし、一番ハノイらしいところは旧市街だと思っているからなんです。

なので、旅行に来る方も、在住者の方も、みなさんぜひ旧市街に来てください。そしてうちのオフィスに立ち寄ってください!(笑)
無料マップも配っていますし、トイレもWi-Fiもあります。

気軽に立ち寄っていただけるオフィスですので! 是非立ち寄って自分と話ししてやってください。 (笑)

Halca
ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?
20代で現地採用者として働く等身大の姿をお伺いすることが出来た気がします。
五十嵐さんの話をもっと聞きたい方は、是非TNK&APTトラベルさんにご来店ください。

TNK&APTトラベル
住所: 5 Hàng Chiếu, Hàng Buồm, Hoàn Kiếm, Hà Nội
電話番号:0945-107-755
営業時間:8:00 ~ 20:00
アメブロ:https://ameblo.jp/aptjapanhn5/

おまけ

今回のインタビューは、前々から気になっていた「serein café & lounge」にて行いました。
ちょうど列車を見ることも出来てラッキーでした。
この日は心地よい風が吹いていて、筆者の好きなマジックアワーの時間帯のロンビエン橋は最高に贅沢な空間でしたよ。
是非、皆さんも訪れてみてください。
お店の詳細は、こちらをご覧くださいね。

(Special thanks!:Metくん



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ABOUTこの記事をかいた人

宮城県仙台市出身。2013年6月からベトナム・ハノイ在住。 ベトナム在住そして、独身女性だからこそ書ける記事を提供できるよう日々奔走中。自称ハノイ美容マニア。趣味である各国の「民族衣装」撮影時にベストなコンディションで臨めるよう、日々新しい美容方法を試している。 本人はしっかりしているつもりなのに、度々変な事に巻き込まれる。地元の後輩からは『生きるコントby大宮エリー』と言われている。