少し前になりますが、2018年11月22日ハノイ国家大学外国語大学日本語学科の学生による日本の企業で働くベトナム人従業員と日本人マネージャーとの間の異文化コミュニケーション「職場における日越コミュニケーション齟齬と背景にある文化の違い」に関する発表会が行われました。
この発表会では、実際に日本語学科の学生が、日系企業を訪問し、日本人社員にインタビューした結果を基に学生が感じたベトナム人と日本人のコミュニケーションの食い違いについてグループ毎にまとめた結果が発表されました。
この発表内容を学生や、参加した企業だけの間で留めておくのは勿体ないと思い、今回の発表会を企画したハノイ国家大学外国語大学の内野先生に記事にして良いかお尋ねしたところ、快く了承して頂けたので、今回の記事としてまとめる事にしました。
尚、今回の記事は日本語学科の4年生のプレゼン発表(合計11チーム)を聞いて、私が印象に残った部分をノートに書き留めた情報を基に作成しています。
そのため、実際の発表内容の形式とは異なる部分がある事を予めご了承くださいませ。
プレゼンテーション講座の目的
外国語大学日本語学部では、毎年約100名の卒業生を輩出し、そのほとんどが日系企業に就職しています。
彼らを企業で活躍できる人材に育てるため、4年生に対してビジネス・コミュニケーション・スキルを集約したプレゼンテーション講座を実施しています。
職場における日越コミュニケーション齟齬(そご・物事の食い違い)と背景にある文化の違い
報連相をしない理由について
- 計画に沿わないで行っている。
- 時々指示を忘れたふりをしている。
- 怠ける。
- 結果が出ない場合には、報告したくない人がいる。
- 自分の仕事は、自分1人でできる事なので、相談の必要は無いと思っている。
- ベトナム企業の場合、ベトナム人マネージャーからは、いちいち報告してくる時間が無駄! 1人で責任を持って仕事ができないと一人前ではない! と言われる。
- 日本人が集団主義なのに対し、ベトナム人が個人主義なことも原因の1つでは。
時間について
- 日本人は、計画的に終わらせるが、ベトナム人はギリギリになってから行う。
- ベトナムでは、時間は伸び縮みする柔軟なものという認識がある。
- 遅刻せずに時間を守ることについて、日本企業は、意識や覚悟を持つように促す。
ベトナム企業は、罰金。
お礼について
- ありがとうという習慣がない。
- ありがとうと言うのは恥ずかしい。
- お礼を言うことが必要とは思わない人が多い。
- 人の距離が近すぎてお礼を言わない。
お詫びをすることについて
- 間違いを認めるのが怖い。
- 人の距離が近すぎて謝らない。
- 自分の非を認めない。第三者のせいにする。
- 嫌われたくない、怒られたくない=プライドが高い。
同僚との関係性について
- ベトナム人は、同僚が友達。家に誘って食事を一緒にとるなどする。
(その際は、プライベートな話が中心で仕事の話はしない。) - 日本人は、仕事とプライベートを分ける。
居酒屋などで一緒に食事をしたり、飲んだりすることもあるが、会話の内容は仕事の相談など、仕事の話が中心になる。
仕事への姿勢
- 日本人は、相手の期待を叶えたい! と思って仕事をしている。ベトナム人は、自分の仕事が終わったら満足。
- ベトナム人は、仕事よりも家族が優先。
- ベトナム社会では、日本ほどの役割を求められることはない。
割り当てられた仕事をやればよく、仕事に100%の力を出さなくても、指摘されることはない。 - 個人で仕事をすることがほとんどで、チームワークがない。
- 日本人は、仕事が終わるまで帰らない(残業主義)だが、ベトナム人は、定時になったら仕事が終わらなくても帰宅する。
ベトナム人の長所
- 団結力
- 楽観主義
- 積極的
- 実行力が高い。
- スピードがはやい。
- 計画性がそこまで無い分、変化があった場合には、直ぐに適応できる。
- フレンドリーで付き合いが良い。
ベトナム人の短所
- 人の言葉に口出しする。
- チームワークのスキルが無い。
- ルールを守らない。
異文化によるコミュニケーション齟齬を減らすための提案
解決策
- ハイコンテクスト(言葉そのものよりも、文脈や背景、言外の意味を重視する姿勢)なコミュニケーションをやめる。
- 方向性の徹底的な共有を行う。
- 合理性を重んじる。
- 定期的にスタッフからの意見交換会を行う。
- ベトナムでは、15時からスナックタイムがある。←コミュニケーションを取ろうということ。
- 日本人がチームワークを重んずるのには、過去の様々なことが影響していることを自覚する(稲作文化、儒教、地理(島国))
日本人は、集団主義だからこそ曖昧さがあることを自覚し、曖昧な表現をやめるべき。
日本は、島国で決められた土地の中で生活しないといけなかったからこそ、”空気を読む”的な文化になり、それでなんとか国が成り立っていたというのはありますが、それが世界の常識と思わず、しっかり言いたい事言って、コミュニケーションを取ってというのが大事だなと思います。
今年も同様の発表会が行われる予定ですので、今回の記事を読んで「是非学生にインタビューに来てほしい! 」「発表会に参加してみたい! 」と思われた方は、「お問い合わせフォーム」よりご連絡下さいませ。
ちなみに2017年の発表会の様子は、下記からご覧いただけます。