【社会人の海外インターンシップ体験談】福嶋大祐さんインタビュー

本日は、2019年3月~5月までの間、社会人の海外インターンシップ制度を利用し、ハノイで働いていた福嶋大祐さんのインタビューをお届けいたします。
普段は、日本の大企業で働いている福嶋さんが、ベトナムの、それも社会問題を取り扱う全くの異業種に飛び込みどのような経験をしてきたのか、3か月間の研修期間を終え、ハノイに帰る直前に色々なお話を伺いました!

Halca
福嶋さん、よろしくお願い致します。
福嶋さん
よろしくお願い致します。
Halca
簡単な自己紹介からお願いします。
福嶋さん
日本では鉄道会社で働いてます。今ちょうど入社5年目になりました。

今の仕事は、総務部門に所属していまして、自分のメインの仕事は役員の秘書業務と、意思決定の会議等を運営をする機関運営業務をメインに行っています。

現在は、会社の研修プログラムで、約3か月間ハノイにある「Tohe」でインターシップをしています。

もともと海外思考があったわけではありません。飛行機に乗るのが嫌いで。

でも、今回会社の研修で海外にいけるチャンスがあるとなって、人生の中でもし海外に行くチャンスがあって、行かなかったとしたら、「あの時もっと色んな可能性があったのにな」って、将来後悔したくなかったのと、今だから出来ることに挑戦しようと思って、海外研修プログラムに参加しました。

Halca
ハノイではどのような業務を行っていたんですか?
福嶋さん
私の業務を説明する前に、まずToheについて説明しますね。

Toheはベトナム国内の恵まれない子供たち、障害を持った子供、親のいない孤児とか、そういった子供たちに対して無償でアートクラスを運営している、日本でいうNPO法人のような会社です。

そこでどうやってお金を回しているかというと、そういった無償のアートクラスを提供するために、アートクラスに参加した子供たちの作品をデザイナーがデザインとして使用し、商品にして販売しています。

販売した商品の一部は、子供たちに還元される仕組みになっていて、残りの利益でアートクラスの運営費をまかなう、そんな事業モデルになってます。

私が担当してきたのは、物を売るというところにおいて、日本人に向けたマーケティング業務です。

アートクラスの様子(写真提供:Tohe)

Halca
Toheさんのビジネスであるベトナム人への支援は中々難しいことも多いと思うんですけど、今回3カ月間実際に働いてみてどうでしたか?
福嶋さん
一番は、扱っている問題が社会問題であるってところは当然難しいところでしたね。そこは一番難しかったんじゃないかなと思います。

私が3カ月間で一番衝撃を受けたのが、ある施設に行った時のことです。

その施設は、Toheが初めてアートクラスを始めた施設なんですけど、その施設の位置は、世間と隔離されたようなところで、非常に障害の程度も重い方々が集められていて、そこには子供から、年を重ねられた方までいらっしゃって、もう本当に何かこう生活してるっていうよりも、ちょっと表現が正しいか分からないですけど、かき集められて隔離されたような、そんな状況でした。

僕はそれまでも、Toheの行っていることについて理解はしていたんですが、それは、紙の上での理解で。

さっき申し上げたような子供たちに無償のアートクラスを提供して、そこから生まれた作品で商品を作って販売して、それで事業を回しているというと綺麗なことなんですけれども、実際にベトナムに来てみて、何かを変えたいと考えた時にできる事って限られていて、難しい状況なんだと感じました。

頭では理解していたんですけど、実際現実を見た時に、自分が何かをしてあげられるっていうイメージが全く沸かないような気持ちに一時期なりました。

Halca
ハノイ市内では、あまり障がい者の方を見たことが無かったのですが、そんな状況があったんですね。
福嶋さん
そうですね、もう本当に絶望を感じるような状況で、Toheが社会問題に対してクリエイティブな方法で解決していくんだよって何かこう理解したような気持ちになってたんですけど、実際に目の当たりにしてみると感覚が全然違いますね。

ただ、その絶望が変わったきっかけがあって、アートクラスって毎週色々な所で開催していて、それはハノイだけじゃなくて、ベトナム全土で14か所ほどアートクラスを始めているんです。

そこに見学に行かせてもらった時に、Toheがアートクラスを主導してメインになって仕切りはしているんですけど、実際そのクラスで子供たちに向き合って教育をしているのは、ベトナムの大学生のボランティアで、彼ら彼女らは子供たちと凄く真剣に向き合っていたんです。

それも、ノーマルの子供たちではなく、例えば自閉症の子供たちというのを相手にしているので、「静かにしてね」とか、「こうやって順番通りやってね」って言っても、なかなか上手くいかないんですね。

そんな難しさもある中で、真剣に子供たちと向き合っていて、ボランティアを行う彼らの姿勢を見た時に自分の中で考えが変わっていきました。

彼らのやってることは、非常に小さいことであるかもしれないんですけど、確実に子供と向き合って確実に彼らを変えようとしていて、実際にそのクラスの中でも変わっていっていて、「社会問題と向き合う」というとすごい大きなスケールで、今まではもっとクリエイティブな方法で社会問題に対して根本から解決するような解決策があるという風に信じてきたんですけど、実際そういうことは理想ではありますけど、そんなことが出てくることはなかなか無くて、子供と真剣に向き合って、地道な活動を行い、自分なりに納得、理解して、進めていくっていうことでないと、何も変えられないんだなっていうのを感じました。

施設での無力感と、でもこうやって向き合っていくんだなっていうことを感じたことで、より一層Toheがやっている活動に対する理解っていうのが深まったなと思います。

見学するまでは、自分も何か大きなことをして変えたいと思っていたんですけど、そうではなくて今ある環境の中で、今あるリソースを使って、自分の出来ることをやろうっていう風に意識は変わったんですね。

それが難しかったことでもあり、Toheに来て一番学んだことじゃないかなと思います。

ベトナム人スタッフと楽しそうに話す福嶋さん、3か月間で強い信頼関係が生まれたようです。

Halca
実際Toheでベトナム人スタッフと一緒に働いてみていかがでしたか?

日本人と働くのと何か違いみたいなのは感じました?

福嶋さん
違いはあくまでも日本人とベトナム人というより、自分が経験した日本の会社とベトナムの会社っていうことですけど、良い面悪い目、両方あると思います。

ベトナムの良い面は、自分たちのやりたいことを仕事としてやっているってことが非常に良いなと思いました。

だから彼らは自分の仕事に対して納得感がすごくあって、やらされているっていうところは無いので、自分で仕事を作って「こういうことやりたい!」っていう意思をしっかりと持っているな、どう生きたいかみたいなところまで考えているなと感じます。

逆に日本はあまりそういうことはなくて、自分の与えられた仕事を毎日何だかんだ言いながらこなしていくっていうのは、印象としてありますね。なので、働き方、仕事への姿勢みたいなのは見習っていきたいです。

一方で日本の良いところだなと思ったのは、結果に対してのコミットが非常に強いことです。

ベトナムで働いていて感じるのは、スタッフが若い世代の人が多いせいなのかもしれないですが、気分にムラがあったりとか、今日はやる気のある日だったり、今日はやる気のない日だったり、そういうのはすごくあって(苦笑)。

良い面の裏返しですけど、やりたいことをやっているので、気分が乗らなかったり、やりたくなかったらやらないですよね。

結果に対してもこういう目標立てたはずなのに、最後まで本当に全力出し切ってやれたのかな?結果出たんだろうか?と疑問に思うところは結構ありました。

日本では自分が与えられた仕事は最後までやりきらないといけないと思っていましたし、実際日本人なら普通にみんな真面目にやり切っていると思うので、そこは日本の方が良い面だと思います。

Halca
ハノイに来てみて、福嶋さん自身、Toheさんだけじゃなく、ハノイでの生活全てを経験して何か考え方とかに変化はありましたか?
福嶋さん
そうですね。

今までずっと日本で生きてきて、自分ってすごいスタンダードな考えを持っているという風に思っていたんですけど、実はそうではなくて、これは自分の置かれていた環境の中でスタンダードと思っていただけで、ここに来てみると文化も違うし、今ある環境であったりとか、全然違うので、自分が今まで当たり前とか常識だと思っていたことは、決して普遍的に通じるものではなくて、あくまでも自分がいるコミュニティの中で普遍的なものと感じていただけのものだったんだなっていうのをすごく感じました。

なので、その違いっていうのはあるんですけど、違いを楽しむ気持ちを持つことが海外に来るときに重要なことなんじゃないかなと思います。

僕はそれを結構楽しめたんじゃないかなと思っているので、そこは考えが変わったところでありながら、大事な所だなって自分なりに感じたところです。

福嶋さんが活動期間に考案した商品の1つ。
飾り付きゴム

Halca
何かこう日本に帰ってからもこういうことを実践したいなとか、こういう風に気持ち切り替わりそうだなみたいなのはありますか?
福嶋さん
Toheの事業ってすごく現場が近くて、アートクラスとか社会問題に向き合っていたりとか、「何のために仕事をしているのか」みたいなのを日々感じながら仕事が出来るんですけど、日本で働いていると、どうしても色んな複数の階層によって意思決定がなされていたりとか、仕事が実際にお客様に対して向き合っているのは現場であって、自分はマネジメントの部門にいてすごい遠いんですね。

全ての仕事はお客様に繋がっているとかいう標語もあったりして、でもそれも単に頭で何となく理解しているだけであって、なかなかそういうところって忘れがちなんですよね。

誰のためとか、何のために仕事しているのかっていうのは、日本にいて特に大企業で働いているとすごく忘れがちになるんですけど、ここで学んだそういう「誰のため、何のために仕事しているのか」っていうのが、明確であるということが自分のモチベーションの一つだなっていうのを非常に感じました。

複数の階層があっても結局最後の部分である「繋がっている」は一緒だと思うので、そこの部分を自分なりにしっかり納得感持って仕事に取り組みたいなと。

そうすると仕事に対する捉え方とかが変わるんじゃないかなっていう風に思うので、難しいんですけど、日本に戻ったら意識してやっていきたいなと思っています。

福嶋さんの想いが商品化という形なって、とても嬉しそうでした。

Halca
今後社会に出る学生さんに何か一言お願いできますか?
福嶋さん
業界によっても、会社によってもカラーが全然違いますし、僕も一社しか経験してないので何とも言えないんですけど、就活生だった時のことを思い出すと何か懐かしいですよね~。

すごいフレッシュな気持ちで、何か良い意味で何も知らなくて、社会に期待を抱いていたっていうか、そういう気持ち忘れかけていたんですが、今回Toheに来てみて、何かそれに近い感情が、ここでも湧き上がってきてるようなところはあります。

それで最終的にはやっぱりさっきの何のために仕事をしているんだろうとか、誰のために仕事をしているんだろうとか、元々何がやりたかったんだっけ?みたいな、そういうところって就活の時にすごい自己分析とかすると思うんですけど、昔考えていたことが今も変わらず同じ考えがあったんだなって振り返られる機会になりました。

今こうフラットな立場で思い返してみると、「何のために、誰のために仕事をするのか?」っていう部分は、自分のコアな部分なんだろうなって思うんですよね。

就活中は、なんか様々なゲームをやらされているような気分になったりもするんですけど、そういうのを通して、自分のこれから仕事をしていく上での軸みたいなコアな部分に近付ける可能性があるなと思うので、良い機会にしてもらいたいなと思います。

偉そうなこと何も言えないんですけど(照)。

Halca
いえいえ。ありがとうございます。
最後に今後同じように海外に出たいとインターンとかで来たいっていう方にアドバイスがあればお願いします。
福嶋さん
実は海外に来たのは人生で2回目で、さらに言うと前回もベトナムでした。

ベトナムしか知らないですし、海外の経験なんてほとんどないので、何かアドバイスっていうのはあれなんですけど、さっき言っていた価値観の違いや文化の違いを楽しむ姿勢っていうのが、海外で生活するうえで大事だなって思っているので、言語のスキルとかビジネススキルとかも、すごい大事なんですけど、1番重要だなと思うのは、「違いを楽しむことが出来る姿勢」楽しむことで、それが周りにも伝わって、受け入れてもらえた気がしたので、心を開いてオープンマインドでやるっていうことじゃないかなと思います。

Halca
ありがとうございました。
福嶋さん
ありがとうございます。

ベトナムの社会問題という難しいテーマにそれも3カ月間で成果を出さないといけないというのは、とても大変な事だったと思います。
その貴重な時期にお話を聞かせていただきありがとうございました!

Toheの取り組みに興味を持たれた方は是非下記もご覧ください。

ベトナムの子どもたちに教育の機会を提供『Tohe』の取り組み 

子どもから大人へ。”遊び心”の大切さを伝える『Tohe』の商品



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ABOUTこの記事をかいた人

宮城県仙台市出身。2013年6月からベトナム・ハノイ在住。 ベトナム在住そして、独身女性だからこそ書ける記事を提供できるよう日々奔走中。自称ハノイ美容マニア。趣味である各国の「民族衣装」撮影時にベストなコンディションで臨めるよう、日々新しい美容方法を試している。 本人はしっかりしているつもりなのに、度々変な事に巻き込まれる。地元の後輩からは『生きるコントby大宮エリー』と言われている。